「第1初級操縦課程(その6)」

「第1初級操縦課程(その6)」

P:「Roger Amagi-17 cleared for take – off.」

「レッツゴー・サー」後席の教官に出発する旨を伝える。

両足で踏んでいたブレーキを同時に放し、両足のかかとを床まで下ろす。

スロットルをゆっくりと前に進めながらエンジンの調子を確認する。

と、 いっても私はエンジン計器など見る余裕などはなかった。

スロットルを更に進め最大出力に達するころ、機首が徐々に左に偏向し てくる。

これは、プロペラの反作用でレシプロ機特有の現象である。滑走路から逸脱しないよう、ラダーを使用し真っすぐに滑走していかなければならない。

航空機が加速し速度が変化していくため、ラダーの使用量も刻々と変わっていく。

「60ノット、アプライ・バックプレッシャー」操縦桿を徐々に後方に引き機 首を離陸姿勢まで上がげようとした。

なかなか機首が上がらない。更に操 縦桿を引いたその時、

「バカヤロー!上げ過ぎだー!」と教官の怒鳴り声 が・・・。

この時点までに最終的に離陸を継続するか否かを決心しなければならない。

航空法で定められている「機長の出発前の確認事項」の最終項 目である。

もちḄん、私には確認することができなかったことは言うまでもない。

浮いた!と思ったら操縦桿が勝手に動いていた。

神の手(後席教官) が・・・・。

だから、今こうして私は生きているのかもしれない。

浮揚を確認し、脚を上げる。

「ギアー・アップ」

「ギアー・インジケーター・アップ・オッケー」

「ウオーニング・ライト・オフ」

脚上げ後、機体は更に加速した。

安全高度に到達後、左旋回で場周経路を離脱する。

「レフト・サイド・クリアー」

旋回時は常に旋回方向の安全を確認し旋回を開始する。

上昇時は20°バンク(20°傾けた状態)で旋回を行う。

20°の傾きは姿勢指示器ではなく、旋回外側の翼の後縁にあるエルロンと言われる可動翼の付根が、水平線と接する位置において機体の傾きを確認する。

そうすることで、コックピット内に目を向ける事なく姿勢を確認することができるのだ。

これが有視界飛行の基本である。

「第1初級操縦課程(その7)」3

計器ばかりを見ていると姿勢が変わる、機体の諸元が安定しない。

気付くのが遅ければ失速し危険な状態に陥いる。

クロス・チェックと呼ばれるチェック要領で常に必要な事項をチェックし、監督し、常に修正をしなければいけないという、全く余裕のない作業である。

景色などを楽しむどころか、墜落しないよう自分の命を守るだけで精一杯であった。

こんなこと で将来戦闘機に乗って敵機と戦闘などできるのだろうかと不安に思っていた事をはっきり覚えている。

「3,000フィート、レベル・オフします。」

「ノーズ・ダウン」「ラフ・トリム」

「スロットル・24インチ」

「プロップ・2,600rpm」

「スロットル・リセット26インチ」

「リ・トリム」

上昇から水平飛行に移行する手順である。

この間、機体の姿勢を安定させないと高度が上下することにより速度が増減し、トリムがなかなかと れない。

高度、速度、方位と航空機の諸元に気をとられていると、機体がとんでもない姿勢になっており大変なことになる。

機首が少しでも下がれば高度が降下し速度が増加する。

反対に機首が少しでも上がれば高度が上昇し速度が減少する。

左右に少しでも傾いていれば方向が変わってしまう。これが3次元である。

いつまでたっても水平直線飛行にならなかった。

修正を繰り返しているうちに指定された訓練空域に到着してしまった。

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