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「第1初級操縦課程(その7)」

のたうち回りながら訓練空域に到達した。 というよりも訓練空域に到着してしまった! 前夜のイメージ・トレーニングでは、訓練空域に到着する前に普通旋回の訓練を完了し訓練空域に入域する予定であった。 早くも初っぱなから計画倒れ・・・・。 上昇から水平飛行に移行するの に、修正の連続であったため手こずってしまった。 仕方がないのでエリ ア(訓練空域)内でぐるぐると普通旋回の練習を開始した。 本来、普通旋回等の訓練は訓練空域外でも訓練できるため、入域する前に計画して練習すべきものであった。 訓練空域とは国土交通省(以下、国交省という。)の告示で示された空域であるため、失速操作訓練や曲技飛行が実施可能な空域である。 しかし、だからといって全く安全な空域とは言えないのである。航空路等の旅客機が飛行する経路は外されて設定されているものの、ヘリコ プターや小型機の往来は頻繁にある。前述のとおり国交省の告示されている空域にもかかわらず、遠慮もせず通過していく。訓練空域を迂回していけば当然時間がかかるため費用が増大する。最短コースで飛んでいる。 さすが民間機!「我が道を行く。」  また、曲技飛行等は国土交通大臣に申請をし、許可を得なければ曲技飛行等をすることはできなように航空法に規定されている。なんと、 自衛隊の航空機であっても適用を受けるのだ。 航空自衛隊は訓練の計画がある部隊、機種、場所等を年間包括して 上級部隊が申請をし、年間を通じ許可を得てる。それでは、有事にお いて許可された以外の場所で敵機と遭遇し格闘戦(曲技飛行等の塊みたいなもの。)ができないのでは?と疑問に思うかも・・・。 格闘戦の機動は、航空法に抵触する行為の何ものでもない。そのため、自衛隊法第107条の規定する防衛出動が下令された場合は適用除外を受けている。 もし、防衛出動下令時、適用除外を受けていなければ、敵機と遭遇した際、緩徐な旋回機動でしか対抗する事ができないためすぐさま撃墜 されてしまうからである。 規則関係はこのくらいにしておいて・・・。 先ずはじめに失速訓練だ。  「失速」と聞くと一般には「危険なこと」と感じるだろう。 どうして、わざわざ飛行機を失速させるのか、私も疑問に思った程だ。 「第1初級操縦課程(その8)」 3  失速操作訓練の目的は、以下のとおりである。 1 失速に近づく兆候を理解し航空機の特性を把握する。 2 失速からの回復操作要領を演練することで、失速にに対する自信を付ける。 3 絶対に失速に入れてはいけないことを理解する。 失速操作訓練には、パワー・オン・ストール、アプローチ・ストール、ラン ディング・キャラクタリスティック・ストール、クロスコントロール・ストール の4種類の課目がある。 手始めに、パワー・オン・ストールだ!すべて元気よく発唱しながら操作をする。 (1)  「プロップ : 2,600RPM」 (2)  「スロットル : 15in-Hg」 (3)  「20°ピッチ・アップ」 (4)  「LEFT :  20°バンク」 機速は徐々に減速していく。 60ノット、間もなくバフェットと呼ばれる小刻みな機体の振動が感じられる。 「ドッ、ドッ、ドッ」初期失速と呼ばれる兆候だ! 「ストール!」 この課目はこの初期失速の状態で回復操作を行う。 (5)  機首を水平飛行の姿勢の姿勢からわずかに下げた姿勢にする。 (6) スロットル:フル・パワー (7)  機速はあっと結う間に失速領域から回復する。 と、前夜のイメージ・フライトではスムーズにできていたはずなの に・・・・。 つづく 次回発行未定

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「第1初級操縦課程(その6)」

P:「Roger Amagi-17 cleared for take - off.」 「レッツゴー・サー」後席の教官に出発する旨を伝える。 両足で踏んでいたブレーキを同時に放し、両足のかかとを床まで下ろす。 スロットルをゆっくりと前に進めながらエンジンの調子を確認する。 と、 いっても私はエンジン計器など見る余裕などはなかった。 スロットルを更に進め最大出力に達するころ、機首が徐々に左に偏向し てくる。 これは、プロペラの反作用でレシプロ機特有の現象である。滑走路から逸脱しないよう、ラダーを使用し真っすぐに滑走していかなければならない。 航空機が加速し速度が変化していくため、ラダーの使用量も刻々と変わっていく。 「60ノット、アプライ・バックプレッシャー」操縦桿を徐々に後方に引き機 首を離陸姿勢まで上がげようとした。 なかなか機首が上がらない。更に操 縦桿を引いたその時、 「バカヤロー!上げ過ぎだー!」と教官の怒鳴り声 が・・・。 この時点までに最終的に離陸を継続するか否かを決心しなければならない。 航空法で定められている「機長の出発前の確認事項」の最終項 目である。 もちḄん、私には確認することができなかったことは言うまでもない。 浮いた!と思ったら操縦桿が勝手に動いていた。 神の手(後席教官) が・・・・。 だから、今こうして私は生きているのかもしれない。 浮揚を確認し、脚を上げる。 「ギアー・アップ」 「ギアー・インジケーター・アップ・オッケー」 「ウオーニング・ライト・オフ」 脚上げ後、機体は更に加速した。 安全高度に到達後、左旋回で場周経路を離脱する。 「レフト・サイド・クリアー」 旋回時は常に旋回方向の安全を確認し旋回を開始する。 上昇時は20°バンク(20°傾けた状態)で旋回を行う。 20°の傾きは姿勢指示器ではなく、旋回外側の翼の後縁にあるエルロンと言われる可動翼の付根が、水平線と接する位置において機体の傾きを確認する。 そうすることで、コックピット内に目を向ける事なく姿勢を確認することができるのだ。 これが有視界飛行の基本である。 「第1初級操縦課程(その7)」3 計器ばかりを見ていると姿勢が変わる、機体の諸元が安定しない。 気付くのが遅ければ失速し危険な状態に陥いる。 クロス・チェックと呼ばれるチェック要領で常に必要な事項をチェックし、監督し、常に修正をしなければいけないという、全く余裕のない作業である。 景色などを楽しむどころか、墜落しないよう自分の命を守るだけで精一杯であった。 こんなこと で将来戦闘機に乗って敵機と戦闘などできるのだろうかと不安に思っていた事をはっきり覚えている。 「3,000フィート、レベル・オフします。」 「ノーズ・ダウン」「ラフ・トリム」 「スロットル・24インチ」 「プロップ・2,600rpm」 「スロットル・リセット26インチ」 「リ・トリム」 上昇から水平飛行に移行する手順である。 この間、機体の姿勢を安定させないと高度が上下することにより速度が増減し、トリムがなかなかと れない。 高度、速度、方位と航空機の諸元に気をとられていると、機体がとんでもない姿勢になっており大変なことになる。 機首が少しでも下がれば高度が降下し速度が増加する。 反対に機首が少しでも上がれば高度が上昇し速度が減少する。 左右に少しでも傾いていれば方向が変わってしまう。これが3次元である。 いつまでたっても水平直線飛行にならなかった。 修正を繰り返しているうちに指定された訓練空域に到着してしまった。

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「第1初級操縦課程(その5)」

タクシーを開始した。 整備員の誘導に従いタクシー・アウトする。 周囲にいる整備員は皆一斉にパイロットに対し敬礼をする。 我々パイロットも敬礼(答礼)をする。しかし、我々訓練生には深々と答礼している余裕は無かった。 取り敢えず、はじめのうちは「手順」の一貫 としての敬礼であった。 タクシー・アウト後は数メートル程直進し、90°変針するが、これがまた飛行機が思いどおりに動いてくれないのだ。 ステアリングはラダー・ペダルと兼用になっており、前輪の方向は容易に偏向する。しかし、ラダー・ペダルは左右それぞれの主輪のブレー キ・ペダルも兼用となっている。 例えば、右にラダー・ペダルを踏み込む と左のラダー・ペダルは手前に移動するため、意識をして左足のつま先を上げていないと左足で左主輪のブレーキをかけてしまい、飛行機は 右に偏向していかないのだ。 やっとの思いでメイン・タクシー・ウエイ(主誘導路)まで出たもの、パワ ーが入っているにもかかわḀず、ブレーキをかけながら地上滑走速度を 制御していると、常に指導されながら地上滑走をしていた。 そうこうしているうちに何とかランナップ・エリア(滑走路入り口手前の待機場所)まで移動することができた。 離陸前にエンジン試運転等を行い安全に万全を期す。これは、航空法に基づく「機長の出発前の確認事項」の最終段階の項目である。 このチェックでエンジンの異常を見極めなければならない。   各チェックにおいて計器等の正常値の範囲が技術指令書に示されている。 一つ一つエンジン計器の指示値を発唱し、確認をする。異常があれば アボート(任務中止)を決心しなければならない。 知識不足等でアボートし帰ってこれば、自分が恥ずかしい思いをするばかりではなく、整備員に多大な迷惑をかけ信頼を失うこととなる。   こういった思いはパイロットである限り常につきまとった。   退官しプライベートで フライトする時も同様な思いである。 しかし、私は五感を大切に生きてきた。何か不安がある時はやめる。   技術指令書に示された範囲内であるが、何時もと違うと不安を感じた場合は、訓練であれば任務を中止すべきであると私は常々部下にそう指導をしてきた。 何か不安があるような場合は往往にして、そのことが気になり安心して航空機を運航できなくなる。 また、飛行したとしても効果的な訓練にならない。 そればかりではなく航空事故の可能性が高くなるであろう。   航空機を運航するのは人である。運航者自らの精神状態のチェックも必要なのだ。   こうして、エンジン・ランナップを行い、管制塔に出発準備完了の旨レポ ートする。   P:「Shizuhama-tower amagi-17 ready.」 C:「Amagi-17 shizuhama-tower  wind 120°  at  7kt  cleard  for  take  off.」   離陸許可がきた。

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「第1初級操縦課程(その4)」

                    いよいよエンジン・スタートだ。  元気よく大声で「エンジン・スタートします!」 1 プロペラ・エリア&リア・エリア・・・・「クリアー!」  エンジンをかける前は全周に注意をくばり、周りにいる整備員に大声で 注意喚起を促す。 2 ガス・・・オン 3 ブースター・・・・オン 4 スローットル・・・・10%オープン 5 プロップ・・・・32ポジション 6 スターター・・・・スタート  私が知っている自衛隊の航空機には「キー(鍵)」がない。 セスナなど は、車同様に「キー」でスターターを作動させる。 私は、未だにセスナに乗る時「キー」を持って飛行機に向かう事が慣れないよく忘れて格納庫までとりに走っている。 そう思うと自衛隊の飛行 機は便利だった。逆に、スターター・スイッチが「キー」でなくて良かったとつくづく思う。 基地内の格納庫に格納されているため不必要なのは当 然だが・・・。  「クァン、クァン、クァン」とプロペラが回る。 7 プライマー・・・・オン  「ブル・ブル・ブル・ルーン」とエンジンがかかった。  突然、頭が真っ白になる次の手順が出てこない。 「・・・・・・」 後席の教官から「回転数は?」「次はどうすんだ?」と、罵声が飛んでくる。 事前に用意しておいたニーボードの自作チェック・リストを確認しようとするが、何処の項目を見たら良いのか判らない。 「あ〜どうしよ〜」 呆れ返った教官があれやこれやと罵声まじりでアドバイス?が・・・。    ・    ・    ・    ・ 18 フラップ・チェック・・・・フラップ・アップ 19 チョーク・・・・アウト  両手を目の前で握り親指を内側に立て、キャノピーの外側で親指を外側に向けるように回転させる。 これがチョークを外すハンドシグナルである。 整備員がメイン・ギヤに装着してある両サイドの車輪止めを外す。 その間、コックピットの中には手を入れる事はできず、前後席共にキャノ ピーの外に手を出さなければならない。 整備員が機体の下に入る時は、安心して作業ができるようにする約束動作なのだ。 整備員から作業完了の「オッケー」サインがくる。 管制塔にタクシー(地上滑走)の許可を取る。 P:「Shizuhama tower Amagiu-17 request taxi」 T:「Amagi-17 shizuhama tower...

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